「愛の影は長く」読了。
昭和56年出版。最晩年の神シリーズを除き、最後の小説。出版時85歳。
神シリーズは昭和61年より、96歳で亡くなるまで、ほぼ毎年1冊、合計8冊刊行。
さる女性が「巴里に死す」の毎月の連載に、読者として手紙を作者に送る。そしてある時、完結後の本を送ってもらったお礼にと、高価な陶器に活けた藤の花を作者に献上する。戦争末期の混乱期で文通がままならないが、自分が著者と初恋の人との間を裂いた張本人であるという自責の念をもって接近してきたと著者は知る。再会してそれは誤解だと伝えたいと著者は考えるが出来ず。結局、その女性の妹から、終戦直後に亡くなったことを知る。
その女性の父親がそれなりの人物であることを知り、昭和天皇に終戦交渉をすべきと進言してもらおうとしたり、三木清との関係も付録的に書かれている。