仏語再勉強の軌跡

フランス語の本が楽しめるようにするのが今年の目標

芹沢光治良016

忙中閑あり。

「われに背くとも」読了。

「人間の運命」は、昭和37年から43年までの書下ろし刊行で、この作品は、その後の昭和45年出版です。「人間の運命」の続編・完結編とも言える47年出版の「遠ざかった明日」の前です。

この2つの作品が一冊の本になったものの前半です。

https://hahanokaigo.hatenablog.com/entry/2020/05/25/094402

芹沢光治良は理想的男女関係を(人間+男)と(人間+女)と考えていて、「人間の運命」の中で、主人公が人間としては成熟していない女である妻との関係に苦しむ姿を書いています。

一応一般的・伝統的・歴史的な男女の役割分担である、男は外で働き、女は家庭を守る、という考えは、前近代的であると考えています。

女性の解放(D.H.Lawrenceのemancipated womanの考え)が、まだまだ行われていない。それは、男の側にも責任があるとの考えです。

この小説の中では、四女をモデルにした、巴里でピアノ修行している女性が一応主人公です。その他、自身の体験、「人間の運命」の中の話をアレンジしたようなエピソードが盛り込まれています。

(人間+女)の女性が、昔は(人間+男)だった男性が、単なる男になってしまった男性に失望するエピソードもあり、逆説的で面白かったです。