仏語再勉強の軌跡

フランス語の本が楽しめるようにするのが今年の目標

死のメンタルヘルス

2014年、著者77歳の出版です。

54歳で書いた「死の育て方」の続編で、自分の「終活」の一つとしての出版であり、もう続編も改定もないと序文で書いています。

自分が一番望んでいた「がんで死ぬ」「その死に参加する」を地でいった元同僚のドキュメンタリーは迫力がありました。

その人は看護師で、著者同様、死ねば全ては終わりと考えていました。最後はいろいろ会いたい人に会ったリ、行きたいところに行ったり、やりたいことをしたりしました。そして最後は自分で鎮痛剤を飲みながら自宅で死のうとしました。しかし、最後は譫妄が出たり、動き回ったりで、介護しきれなくなった奥さんが入院させ、そこで亡くなったそうです。

最後まで正気と自己決定を貫くのは難しい。どこからかで決められなくなってくる。最後の最後は諦めて、痛み止めを大量に使い、うつらうつらと死ぬということも簡単ではない。人間は弱い、人を助けたり、助けられたりして生きている。最後は人に頼ったりする死に方の方が自然なのかも知れないと、著者は書いています。

その他、3.11がもたらした心境の変化を書いています。『「ほどよいところであの世行き」から「できる限り長生き」に変わった。それは、原発なしの社会を作り、被災者に出来る限りのことをする為だ。福島で「被曝・放射能被害」による身体・精神的・社会的影響が出てくるのはこれからだ。すでに現れている自殺のほかに、これからさまざまな「死」が現れるだろう。それを受け止めながら、わたしたちは生きていかねばならないのである。』

その他、対談があったり、いろいろありますが、もう一つ印象に残ったのは、ドイツ生まれの精神科医キューブラー・ロスについての言及です。彼女は死の受容の5段階を提唱したことで有名で、いろいろな本にそのことが書かれています。私も彼女の本を一冊読みました。死後の世界を信じていて、死ぬと蝶々のように体から離れてあの世に飛んでいくと、死に瀕した子供たちに教えたり、全世界を飛び回って講演をしたりしていました。

著者も同業の精神科医ですので、彼女の論文とかを読んでいたのでしょう。彼女の死を見て彼女が好きになった、最後はスピリチュアルな世界に入り込み、素晴らしい死後の世界を信じて死んでいった、自分の研究した学説・理論で突っ張らなかった、いかにも人間らしい弱さを見せて死んでいったからだ、と書いています。

私は、彼女は、初めから死後の世界を信じていたものと思っていましたが、初めはそうではなかったようですね。

著者は54歳で書いた「死の育て方」以降もいろいろ書いています。私は死についての記述があるだろうと思われる本をピックアップして読みました。これが最後です。

3.11はありますが、基本的に54歳の時の結論と変わっていないと思いました。年齢的に死に近付き、いろいろ具体的に準備(終活?)をしつつありますが。。。

私は、もっと近付かないとわかりませんが、最後まで死後の世界はないと突っ張らなくともよいかなという気もしてきました。キューブラー・ロスが変わったことを知ったことの影響かも知れません。それでも、おそらく、0.00000001%の可能性を夢見るということでしょうが。。。。

生きていることも夢だ。死ぬことも夢だ。だから楽しい夢を見ながら死んでいこうと、心から思って死んでいきたいですね。