仏語再勉強の軌跡

フランス語の本が楽しめるようにするのが今年の目標

なにぶん老人は初めてなもので

2000年、著者63歳の出版です。

仕事その他の出来事を書いています。まだまだ元気です。特に、子育てが終わった後の夫婦の他人性についての記述は面白い。鋭い分析と文章力です。

以下に主題である老人についての著者の記述を抜き出します。

「人の人たるゆえん、他の生物と違うところは、自分が有限の存在であることを自覚して生きていることである。もちろんそのことをたえず意識していては日常生活ができないので、普段は棚上げしている。だが誰がどうあがいても死は誰にも平等に配達されてくる。青年や中年にとって、この定めは理念であり、感覚としては永遠に生きるつもりになっている。この定めを感覚として自分に受け入れることを老いという。
 だからといって死が怖いワケではない。万事あきらめてしまうわけでもない。有限の存在であることを時々、意識して生きるがゆえに、もっとも人間らしい人間になること - 「成熟」である。それが老いの本質である。」

私は、70歳になって、ようやく、今までとは全く違った感覚で、自分の死、あるいは有限性を意識しだしました。著者の言う如く、理念としてではなく、すぐ、そこにあるものとしてです。50歳、60歳になった時も強く意識しましたが、それは理念としてだけだったようで、現時点の感覚とは全く別物です。

著者は63歳時点でこれを書いていますから、ずいぶんと早いですね。それに、著者と違い、私は、まだまだ死が怖いです。まだまだ修行が足りませんね。子供がいないことが関係している気もします。大きな課題です。