仏語再勉強の軌跡

フランス語の本が楽しめるようにするのが今年の目標

芹沢光治良023

三連作の一番目「孤絶」読了。

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パリでの留学の最終段階で体調を崩し、危篤状態となる。なんとか回復したが、結核であることがわかり、スイスに療養に行く。そこで、学問の追求は自分の本当にやりたいことではなく、文学の道に進むべきだと決心する。パリに戻るが、体調は完全には回復していない。結局、大学での研究を発表して、けじめをつけ、フランスの高地の療養所で養生することになる。その過程で、妻は妊娠、出産しているが、療養所へは主人公のみが行き、妻は預けた子供のそばに留まる。

大体のところは自伝的のようですが、どこまでが事実かはわからない。特に、妻に対しては、相当、手厳しく書いている。フランス人との交遊もかなりですが、これも、短期間で、そこまで親しくなれるか、やや疑問。勿論、フランス語はできたでしょうが。

芹沢光治良は、関東大震災の保険金が入り、それを使って何年かフランスで勉学してこいという養父の勧めに従い、かつ、出発の二か月前に大金持ちの娘と結婚、金銭的にはかなり裕福な留学であった。しかも、第一次大戦後で、円レートが高く、その分もよけに裕福に暮らせる背景はあった。

しかし、その点を割り引くにしろ、勉学のみならず、音楽、美術、演劇、文学等の芸術分野にも深く関心を持って追求し、フランス人との交際も積極的に行ったことは確かなようです。その無理がたたり、29歳からの数年間で、危篤状態で死にかけるほど健康を害したわけです。