多分三度目の全体通読です。何回読んでも新しい。著者の言うように、個体としての人間が死する運命にあるように、種としての人類も死する運命にあるように思えます。
今まで無限の世界にいるように自由に利己的に生きてきた人類が、世界は有限であるという事実に直面し、自己規制と共存・平衡の方向に自己を切り替えられるか、と著者は危惧しています。
アミノ酸にはL型とD型があるのに、地球上の全ての生物のタンパク質を構成しているアミノ酸はL型だけ、ウイルス、バクテリア、植物、動物の全てがそうだそうです。これは深い意味のある事実ですね。無限に考えが広がります。
医学の進歩が、今までならば死んでいた老人を生きながらえさせ、あるいは障害を持った人たちをも生きながらえさせている。種としての人類は弱くなっている。だからと言って適者生存の考えで、それらの人々を切り捨てる弱肉強食的考えはどうなのか。厳しい問題提起です。
弱者を犠牲にした強者だけの「恥ずべき生存の道」をとるか、弱者とともに生活し、そのために人類の終末を招くかもしれない「尊厳ある人類の終末」を選ぶか。
ほぼ40年前の論文、講演をまとめた本です。
昨今の世界情勢を鑑みると、第三の道を考える余裕は、今の人類には無いようですね。まだまだ、サル時代の群れ社会から進歩していないように思えます。群れが、国家とか、思想・宗教になっただけのようです。